ハードボイルドな男たち
2008.05.19(22:48)
「手筈はいいな?よし、持ち場につけ。」低く押し殺した声で二人の相棒に指示をだした。
無言でうなずくと二人の男は音ひとつたてることなく、茂みの奥と消えていった。
あたりは何事もなかったかのように静寂と闇に包まれた。
俺は植え込みのひとつに身を隠したままターゲットの監視を再開した。
都内某所、午前2時半。
オフィスビルが立ち並ぶコンクリートジャングルにあって、
わずかに人間性を取り戻せるささやかな空間がある。
周りをぐるりと取り囲んだ植え込みの内側は、直径30mほどの石畳の広場。
その中心には、広場を見下ろすように、オレンジ色の怪しい光を放つ街灯。
昼間はひと時の憩いを求める勤め人で賑わうこの場所も、この時間ともなれば、
風にそよぐ若葉の触れ合う音すら聞き取れそうなほど静けさに覆われている。
広場の中心、すなわち街灯の真下には、仲間が一人石畳に直接腰をおろした状態で
拉致されている。すぐ横には屈強そうな男が、あらゆるものを見逃すまいと
360度にわたって目を光らせている。
そろそヤツにも限界が近づいてきた。俺の目にもはっきりわかる。
一刻も早く救出してやらなくてはならない。
俺は時計を見た。
あと55秒。
俺たちは持ち場に着く前に時計を合わせた。
2時33分00秒にアタックを開始する。
すでに二人の相棒も持ち場につき、正確に刻まれる秒針を見つめているにちがいない。
まず俺が囮となって植え込みから広場へと飛び出す。
見張りの男が、ヤツを奪還されまいと街灯の元へと戻ろうと向きを変えたその瞬間、
男の死角に位置していた相棒どちらかがターゲットを急襲する。
そして残った一人がヤツを救いだす。
作戦としては使い古されたものだが、
時にはそういう古典的な手段が功を奏することもある。
あと5秒、4、3、2、1…
0と同時に俺は植え込みを飛び越えた。
そして広場の中心めがけて全力で走った。
靴音が石畳のせいで響き渡る。
音に気づいた男が、案の定、奪われまいと、ヤツに向って一目散に戻る。
男の方が、俺よりもはるかにヤツには近い。
その時、男の背後から後を追うように相棒の一人が植え込みを飛び越える。
そしてターゲットに向って一直線に走り始めた。
見張りの男は俺に注意を集中させているため、背後の相棒には気づいていない。
同時にもう一人の相棒が植え込みの隙間から飛び出した。
コイツの役目は捕らえられている仲間の救出だ。
見張りの男は、やはり俺より早く広場の中心へと達し、
俺に向ってニヤリとした。
俺は終わった。
しかし俺は囮だ。それでいい。
その時だ。
ターゲット襲う役目の相棒が、ターゲットに到達しそれを思いきり蹴り上げた。
ターゲットはきれいな放物線を描き、15mほど飛んだ後、
地面に落ちてカランカランと転がった。
「やったぞ!」
「助けたぞ!」
俺たちは口々に叫びながら、走って茂みの中へと飛び込んだ。
ハードボイルドな男たちのカン蹴りは、その後夜明けまで続いた。
↓ また2日後にドカンと落ちる予定だ。よろしければ、ひとつご協力を。










