雪に幻惑されたハードボイルド
2008.02.03(17:30)
俺だ。ボギーだ。今朝、目を覚ましカーテンを開けると、一面の雪だった。
なんてこった…。
俺は悩んだ。
俺は生まれてこのかた寒い地域に住んだことはない。
雪などひと冬に1・2度見るかどうかだ。
だから、実は、俺は、雪を見ると狂喜乱舞してしまう!
ところがだ。中途半端に降った雪はスベる。おまけに俺はハードボイルドだ。
トレンチコートにソフト帽、そして靴はと言えば革底のストレートチップだ。
ハードボイルドにゴム底のビジネスシューズなどありえない。
革底の靴で雪の降る中出かけて行けば、
産まれたばかりのヤギの赤子状態になる。あるいは初めてのスケート小憎だ。
確実にスベる、コケる、格好が格好だけに余計に恥ずかしい。
だから悩む。雪で遊びたい。でもハードボイルドと雪は両立できない。
ならば今日一日だけハードボイルドをかなぐり捨てるか。
俺の心は決まった。今日はハードボイルドはお休みだ。たまには休みもあっていい。
防寒具に身をつつみ、しっかりと長靴を履き、ミッキーのカチューシャまでつけて、
俺は外へと飛び出した。そして我を忘れて心ゆくまで雪と戯れた。
満足だ…。もう、思い残すことはない、今日は。
これでまた明日からハードボイルド業に精をだせるぜ。
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ハードボイルド、けじめをつける
2008.02.06(12:54)
俺だ。ボギーだ。最近、出会い系メールを真に受けて喜んでいたのは、どこのどいつだい?
「あたしだよ!」
いけねぇ。これは女王様だ。俺はハードボイルドだった。
昨日俺は衝撃の事実を知らされガラにもなく落ち込んじまった。
一斉に撒かれている出会い系メールってやつを、俺にだけきているもんだと
勘違いしちまってな。
「ふッ、ダセえぜ…。」
俺は遠くを見つめていた。遠い遠い過去のできごとを思い出していた。
幼稚園のころだ。俺にはピンキー(ももちゃん)というステディがいた。
ピンキーは俺にぞっこんな様子で、いつもこう言っていた。
「ねえねえ、ボギちゃん。わたし大きくなったらボギちゃんのおよめさんになるの。」
ところがだ。
ある日、ピンキーが他のションベン臭いガキに向かって、
同じことを言っているのを耳にした。なに?ピンキーは俺のおよめさんに
なるんじゃなかったのか?聞けばほとんどのガキどもは
ピンキーにこう言われたことがあるらしい。
とんだあばずれ女だ。
しかし俺はハードボイルド小憎だ。
婦女子に対してはジェントルに接しなきゃいけねえ。俺はこう言ったね。
「なあ、ピンキー。俺に惚れちゃあいけねえぜ。俺はお前には危険すぎる小憎だ。」
ピンキーは言った。
「じゃあねー、ボギちゃん、バイバーイ!」
これでいいんだ、これで。俺はその日、やけ牛乳を飲みすぎ腹をこわした。
俺はこれまで受け取った忌々しい出会い系メールとやらを、
すべて燃え盛る暖炉の中に放り込んだ(これは言葉のアヤだ。)のではなく、
すべて削除した。俺は新しい自分に生まれ変わった気がした。
もしかしてこれがあの有名な迷惑メールってやつだったのか?
また会おう。
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ハードボイルド、道端で気づく
2008.02.17(10:39)
俺だ。ボギーだ。昨日のことなんだが、俺はお決まりのスタイルで街へと出かけた。
忌まわしい例の一件以来、サングラスは普通のものに変え、
マスクをするのはやめている。
すると当然のことながら花粉症がひどい。
しかし俺はハードボイルドだ。そこはグッと我慢だ。
人さまの前で弱みなど見せられるか!
くしゃみ? するもんか!
鼻水? 全部飲み込んでやる!
一人、花粉症に不必要とも思える戦いを挑んでいると、
前方に一人のバ、いやお年寄りが見えた。
どうやら道を渡りたいようだ。
道は片側一車線づつ。それほど車の量は多くない。
しかし途切れることなく続いてくる。
若いモンならすきをみて十分渡れるほどなのだが、
たぶん無理なのだろう。
近くには横断歩道も信号もないので、
こりゃ渡るのはたいへんだ。
そうこう思いながら歩いているうちに、
おれはそのお年寄りのところに到達した。
俺はためらうことなく手を貸した。
「お嬢さん、あ、いや、おばあちゃん、渡りたいの?」
おれはお年寄りの手を取り、車の切れ目を見計らって
道を横切り始めた。
あっという間に渡り切った。
それも当然。最初からその程度の道幅だしな。
「さあ、渡ったよ、おばあちゃん、気をつけてね。」
するとこう言った。
「ありがとうねえ。あんた見かけによらずいい人だねえ。」
俺は再び道を横切り、もといた側に戻り、そして歩き始めた。
ささやかなことだが良いことをしたという満足感。
しかしなにかひっかかる。
俺の本能が『ボギー、見落とすな!』と警鐘をならしている。
何だ?俺は考えた。そしてわかった。
「見かけによらず」、だと!
『あの、クソバ…!』
振り返った時、そのクソお年寄りは、すでに夕闇に紛れてしまっていた。
また会おう。
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